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【相続放棄と遺族年金・未支給年金】相続放棄しても遺族年金・未支給年金は受け取れるのか。

亡くなった人に借金があったことがわかり、相続放棄をしたい。
しかし、一方で遺族年金や未支給年金を受け取ることもできそう。
相続放棄をするとこれらの年金を受け取ることができなくなってしまうのではないか。
こんなことでお悩みの方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、相続放棄をしても遺族年金や未支給年金を受け取ることができるのかというテーマで解説をしていきます。

1 相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人の財産について相続の権利を放棄することです。
一般的には、被相続人の遺産に借金が含まれており、他の相続財産をもってしても返済が不可能であるような場合に相続放棄を行います。
相続放棄により、自腹を切って被相続人の借金を返済しなくてよくなります。
ただし、相続放棄は、被相続人の借金を引き継がなくてよいだけでなく、その他の資産も相続できなくなってしまうものであることに注意する必要があります。
相続放棄ができる期間は、自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内です。

2 遺族年金とは

遺族年金とは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の総称です。
遺族基礎年金とは、国民年金に加入中の人(自営業、専業主婦、学生等)が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた18歳到達年度の末日までにある子(障害者は20歳未満)のいる配偶者または子が受け取れる年金です。
遺族厚生年金は、厚生年金に加入している会社員が亡くなったとき、又は加入中の傷病がもとで初診日から5年以内に亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母の中で優先順位が高い人)が受け取ることができる年金です。
遺族によっては、遺族基礎年金と遺族厚生年金をともに受け取れる場合があります。

3 未支給年金とは

未支給年金とは、死亡した年金受給者に支給すべきであるにもかかわらず、支給されたかった年金です。
未支給年金として請求できる年金には、国民年金、厚生年金・共済年金、企業年金、国民年金基金の年金があります。
未支給年金が発生するのは、「公的年金の大原則」が影響しているといわれています。
「公的年金の大原則」とは、①請求しないと受け取れないこと、②後払いであることを指します。
この原則のために、年金受給者本人が請求する前に亡くなってしまった場合、本来であればもらえるはずであった未支給年金が発生します。
未支給年金は、老齢年金だけに限らず、障害年金や遺族年金を受け取っていた人が亡くなった場合にも発生します。
なお、未支給年金は、遺族年金とは異なるものなので、遺族年金とは別に請求する必要があります。

4 相続放棄しても遺族年金は受け取れるのか

遺族年金は、遺族がその固有の権利に基づいて受給するもので、相続財産に含まれるものではありません。
そのため、相続放棄をした場合でも、遺族年金を受け取ることができます。
なお、国家公務員等共済組合法に基づく共済年金や国民年金の遺族共済年金もそれぞれの法律で受給権者が定められており、受給権者に固有の権利があるため、相続財産に含まれず、相続放棄をしても受け取ることができます。

5 相続放棄しても未支給年金は受け取れるのか

未支給年金は、死亡した年金受給者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、または兄弟姉妹、これ以外の3親等内の親族であって、死亡の当時に生計が同一だった人が受給できます。
未支給年金は、残された家族の保護を目的としています。つまり、相続とは別の観点から一定の遺族に対して支給を認めるものといえます。
そのため、未支給年金は、相続財産には含まれず、相続放棄をしても受け取ることができます。

6 未支給年金を受け取り可能な遺族

未支給年金の受け取りが可能なのは、先に述べたとおり、死亡した年金受給者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、または、これ以外の3親等内の親族で、死亡当時生計が同一だった人です。
優先順位は、①配偶者、②子、③父母、④祖父母、⑤兄弟姉妹、⑥これ以外の3親等以内の親族となります。
配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、またはこれ以外の3親等内の親族でも、年金受給者の死亡当時、生計が同一でなかった人は受給することができません。
また、甥や姪、従兄弟は生計を同一にしていても受給することはできません。

7 未支給年金の受給方法

未支給年金の具体的な需給方法は以下のとおりです。

7-1 請求先

未支給年金の請求先は、受給していた年金の種類によって異なり、原則として以下のようになります。

  1. 老齢基礎年金、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金:年金事務所
  2. 障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金:市区町村役場の国民年金課
  3. 退職共済年金、障害共済年金、遺族共済年金:加入していた共済組合

7-2 必要書類

請求に必要な書類は主に以下のとおりです。請求先によって必要書類が異なることがあるので、詳しくは請求先で確認することが必要です。

  1. 未支給年金請求書(日本年金機構のホームページからダウンロードできます。)
  2. 死亡した人の年金手帳・年金証書
  3. 戸籍謄本
  4. 請求者の世帯全員の住民票
  5. 振込先の通帳・キャッシュカード

7-3 請求期限

未支給年金の請求期限は5年です。
5年以内に請求を行わなかった場合、未支給分は時効により消滅します。
なお、亡くなった人が繰り下げ受給の待機中だった場合には、消滅時効の起算は65歳からとなります。

8 まとめ

今回は、相続放棄と遺族年金・未支給年金の関係について解説してきました。
相続放棄をしてしまうと、遺族としての権利が全てなくなるわけではなく、年金は一定範囲で受給できることがお分かりいただけたと思います。
相続放棄はあくまで「相続の権利」に関するもので、その効果は、見方によっては限定的です。
相続放棄したいものの、遺族として受け取りたい権利があってお悩みの方は、是非当事務所にお気軽にご相談ください。相続放棄をしてよいかどうかとともに、請求のお手続までご相談に乗ることが可能です。
皆様のご相談をお待ちしております。

この記事は司法書士が監修しております。

司法書士 石山健二

相続の累計問合せ件数4,479件(2023年末まで)と実績が豊富で、相続に特化するはながすみ司法書士事務所の所長。相続は丁寧な説明が必要というのがモットーで、相続の幅広い知識と経験を基にした顧客本位の相談対応をワンストップで行っている。

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