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一人っ子の相続登記は本当に簡単? よくある「3つの落とし穴」と 【2024年4月義務化対応】 スムーズに進めるステップ

相続登記を考えている女性のイラスト

「自分は一人っ子だから、親の相続は兄弟がいるケースより簡単なはず」

そう考えている方は少なくないかもしれません。

確かに、相続人の数が少なければ、遺産の分割で揉める可能性は低いでしょう。しかし、「一人っ子=相続手続きが楽」とは一概には言えません。

この記事では、一人っ子の相続で見落としがちな「3つの落とし穴」と、2024年4月1日から義務化された相続登記をスムーズに進めるためのステップを、司法書士が分かりやすく解説します。

一人っ子でも相続登記が簡単とは限らない理由

「一人っ子なら相続人は自分一人だけ」と考えている方が多いのですが、実はそう単純ではありません。まずは、一人っ子の相続でよくある誤解について見ていきましょう。

「兄弟がいない=手続きが楽」は誤解

一人っ子の場合、相続人は自分だけだと思いがちですが、それは被相続人に配偶者や子以外の相続人がいない場合に限られます。
親が再婚していて前の配偶者との間に子がいたり、あなたが知らない間に認知した子がいたりするケースも考えられます。このような場合、その子もあなたと同じ相続人となり、遺産分割協議が必要になります。
つまり、一人っ子だと思っていても、法律上の相続人が複数存在するケースは決して珍しくないのです。

戸籍・名義・書類の問題は一人でも同じ

相続人が一人であっても、相続手続きが大幅に簡略化されるわけではありません。

特に不動産の名義変更である「相続登記」では、相続人の数に関係なく、法律上必要とされる書類をすべて揃える必要があります。

その代表例が、亡くなった方について「他に相続人がいないこと」を確認するための戸籍関係書類です。これは相続人が一人の場合でも省略できず、相続登記を行ううえで必須となります。

また、不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明書など、専門的な書類も数多く必要になります。

一人っ子であっても、相続登記の手続き自体の負担が軽くなるわけではない点には注意が必要です。

一人っ子でも起こりうる相続トラブルの代表例

「一人っ子だから相続トラブルとは無縁」と安心していませんか?実際には、一人っ子の方でも予期せぬトラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。

ここでは、実務でよく見られる代表的なトラブル事例をご紹介します。

再婚・認知・非同居配偶者

前述の通り、戸籍を丹念に調べる過程で、これまで存在を知らなかった異母兄弟や認知された子の存在が明らかになることがあります。

再婚のケースでは、親が離婚と再婚を繰り返していた場合、前の配偶者との間に生まれた子どもたちも、あなたと同等の相続権を持ちます。たとえ親が離婚して何十年も経っていても、法律上の親子関係は消えません。そのため、会ったこともない異母兄弟・異父兄弟が突然相続人として現れることがあるのです。

認知されたケースも同様です。親が婚姻関係にない相手との間にもうけた子を認知していた場合、その子も法定相続人となります。認知は戸籍に記載されるため、戸籍調査の過程で初めてその存在を知ることになります。

非同居配偶者のケースもあります。たとえば、両親が事実上別居していたものの、法律上は離婚していなかった場合、配偶者には必ず相続権があります。長年別居していて交流がなかったとしても、その相続権は失われません。

もし他に相続人が見つかった場合、遺産をどのように分けるかについて、相続人全員で話し合う「遺産分割協議」を行わなければなりません。

一人で相続できると思っていたのに、急に現れた他の相続人と話し合いが必要になると、精神的な負担も大きく、手続きが複雑化する原因となります。連絡先を調べるだけでも一苦労ですし、何十年も会っていない親族や、全く面識のない方と遺産について話し合うことは、想像以上に大きなストレスを感じるでしょう。

親族からの口出し

一人っ子であっても、法定相続人以外の親族から「自分にも権利があるはずだ」「生前に世話をしたのだから財産を分けてほしい」といった主張がなされることがあります。

法律上、相続権のない親族には遺産を受け取る権利はありませんが、こうした感情的な対立は家族関係にひびを入れ、手続きを進める上での精神的な障害となります。親の葬儀や法事の場で、こうした話題が持ち出されることも少なくありません。

遺言書があれば、故人の明確な意思として親族を納得させやすくなりますが、遺言書がない場合は、法律に基づいた冷静な説明が必要です。

借金・保証人リスク

相続においては、原則として、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や保証債務などのマイナスの財産もすべて引き継ぐことになります。

もし親に多額の借金があった場合、何も手続きをしなければ、一人っ子であればそのすべてを一人で背負うことになりかねません。財産調査をしっかり行い、場合によっては相続放棄を検討する必要も出てきます。

相続放棄は、相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。この期限を過ぎると、原則として相続を承認したものとみなされ、借金も含めてすべて引き継ぐことになってしまいます。「親の借金は関係ない」と思っていても、法律上は相続人に返済義務が生じるため、早めの財産調査と判断が重要です。

よくある落とし穴① 親の戸籍集めが長期化する理由

相続登記の準備で多くの方が想定以上に時間を取られるのが、戸籍の収集です。

相続人を正確に確定するためには、亡くなった親について、出生時から死亡時までの戸籍関係書類を連続して確認する必要があります。

しかし、これらの戸籍は、必ずしも一つの役所ですべて揃うわけではありません。

結婚や転勤などにより本籍地を移している場合、その都度、本籍地ごとに役所へ請求を行う必要があります。最後の本籍地で取得した戸籍に記載されている「従前の本籍地」をたどり、出生時まで遡って請求を繰り返すのが一般的な流れです。

郵送での請求になるケースも多く、1か所の役所とのやり取りだけで数週間かかることもあります。その結果、戸籍収集だけで数か月を要することも決して珍しくありません。

なお、2024年3月からは「戸籍謄本等の広域交付制度」が始まり、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本をまとめて請求できるようになりました。この制度を利用すれば、従来よりも戸籍収集の負担を軽減できる場合があります。

もっとも、広域交付制度を利用する場合でも、原則として平日に役所へ出向く必要があります。特に、「出生から死亡まで」といった一連の戸籍を請求する場合には、戸籍内容の調査や確認に時間を要することが多く、当日にすべての戸籍が交付されないのが一般的です。そのため、少なくとも2回程度の来庁が必要になるケースも少なくありません。

また、事前予約が必要な役所もあるため、来庁前に、市区町村役場へ問い合わせ、手続の流れや必要事項を確認しておくことが大切です。

さらに、古い戸籍が手書きで判読しづらい場合や、戦災などにより戸籍が焼失している場合には、専門的な判断が必要になることもあります。

よくある落とし穴② 不動産の名義が古いままだと売却・融資がストップ

相続した不動産の登記名義を亡くなった親のまま放置してしまうと、さまざまな不利益が生じます。

法務局の登記記録を見ても現在の所有者が誰だかわからない「所有者不明土地」は、公共事業や周辺地域の開発の妨げになるなど、社会問題化しています。

いざその不動産を売却したい、あるいはそれを担保にお金を借りたいと思っても、登記名義が自分でなければ手続きを進めることができません。相続登記が未了のままでは、その不動産を有効に活用したり、処分したりすることができなくなってしまうのです。

また、放置している間に次の相続が発生すると、手続きはさらに複雑になります。たとえば、祖父名義の不動産を父が相続登記しないまま父が亡くなった場合、祖父から父への相続登記と、父から子への相続登記の両方を行わなければなりません。相続人の数も倍増し、中には所在不明の方や、すでに亡くなっている方も出てくるでしょう。

時間が経てば経つほど、関係者が増え、手続きは困難になっていきます。「いつかやろう」と先延ばしにせず、早めに対処することが重要です。

よくある落とし穴③ 遺言書がないと手続きが複雑に

親が遺言書を遺してくれていれば、原則としてその内容に従って相続手続きを進めることができます。しかし、遺言書がない場合は、法律で定められた相続人(法定相続人)全員で「遺産分割協議」を開き、誰がどの財産を相続するのかを決めなければなりません。

一人っ子だと思っていても、戸籍を調べた結果、他に相続人がいることが判明した場合、この協議が必要になります。もし話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所での調停や審判に移行することもあり、手続きはさらに複雑で長期化してしまいます。

遺産分割協議では、相続人全員の合意が必要です。一人でも反対すれば協議は成立せず、調停や審判という法的手続きに進まざるを得なくなります。調停では家庭裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進めますが、それでも合意に至らない場合は、最終的に裁判所が審判で分割方法を決定します。

こうした事態を避けるためにも、生前に親と相続について話し合い、可能であれば遺言書を作成してもらうことが、一人っ子であっても重要です。

一人っ子の相続登記・スムーズに進める4ステップ

ここまで、一人っ子の相続で起こりうるトラブルや落とし穴について見てきました。では、実際に相続登記を進める際は、どのような手順で進めればよいのでしょうか。基本的な流れを4つのステップに分けて解説します。

STEP1:相続人の調査・確定

相続登記の第一歩は、法的に誰が相続人になるのかを正確に確定することです。

そのために必要となるのが、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本です。これらを確認することで、他に相続人となるべき人物がいないかを判断します。

あわせて、相続人全員の現在の戸籍謄本も取得します。これらの書類が揃ってはじめて、次の財産調査や相続手続きへ進むことができます。

相続人調査は、その後のすべての手続きの前提となる重要な工程です。

STEP2:相続財産の調査

亡くなった方がどのような財産を遺したのかを調査します。

不動産については、役所で「名寄帳(なよせちょう)」を取得すると、その人が所有する不動産の一覧を確認でき、調査漏れを防ぐのに役立ちます。

また、預貯金については各金融機関に照会をかけ、残高証明書を取得します。株式や投資信託などの有価証券がある場合は、証券会社にも確認が必要です。

負債についても忘れてはなりません。借入金の有無は、信用情報機関への照会や、自宅に届く郵便物などから確認します。保証人になっていないかも、契約書類などを丁寧に調べる必要があります。

STEP3:遺産分割協議書の作成

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行い、その結果を「遺産分割協議書」という書面にまとめます。この書類には、相続人全員が署名し、実印を押印します。

相続人が1人の場合は、遺産分割協議書は、不要です。

遺産分割協議書には、相続する財産を具体的に特定して記載する必要があります。不動産であれば、登記簿謄本に記載されている通りの地番や家屋番号を正確に記載します。預貯金であれば、金融機関名、支店名、口座番号などを明記します。

相続人が一人の場合でも、金融機関によっては相続手続きのために遺産分割協議書に代わる書類(相続届など)の提出を求められることがあります。

STEP4:登記申請

必要な書類(戸籍謄本一式、遺産分割協議書、住民票、固定資産評価証明書など)を揃え、不動産の所在地を管轄する法務局に相続登記の申請を行います。

登記申請書は法務局が定める様式に従って作成します。登録免許税(不動産の固定資産税評価額の0.4%)も納付する必要があります。

申請後、法務局での審査期間は通常数週間程度です。補正(書類の訂正や追加提出)が必要な場合は、法務局から連絡があります。無事に登記が完了すると、登記識別情報通知(従来の権利証に相当するもの)が交付されます。

法定相続情報証明制度の活用

なお、戸籍集めの負担を軽減する制度として「法定相続情報証明制度」があります。一度、戸籍謄本一式を法務局に提出して「法定相続情報一覧図」の認証を受ければ、その後の相続手続き(銀行預金の解約など)で戸籍謄本一式の提出が不要になり、手続きを同時に進められるメリットがあります。

この制度を利用すれば、複数の金融機関での手続きを並行して進めることができ、全体としての手続き期間を大幅に短縮できます。法定相続情報一覧図は無料で何通でも発行してもらえるため、相続手続きが多岐にわたる場合には特に有効です。

相続登記は義務化(2024年4月)!期限内に終えるための司法書士活用法

これまで任意とされてきた相続登記ですが、所有者不明土地問題を解決するため、2024年4月1日から法律で義務化されました。これは一人っ子の相続でも当然に対象となります。

相続登記義務化の概要

義務化により、相続登記には明確な期限が設けられ、違反した場合の罰則も定められました。すでに相続が発生している場合も含め、すべての方に関わる重要な制度変更です。以下で、その内容を詳しく見ていきましょう。

■期限

相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

■罰則

正当な理由なく期限内に登記をしないと、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。

■過去の相続も対象

この義務は、法律が施行された2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。過去に相続した不動産でまだ登記をしていない場合は、2027年3月31日までに登記を済ませる必要があります。

相続人申告登記という選択肢

もし、相続人間で争いがあるなどの理由で3年以内に遺産分割協議がまとまりそうにない場合は、「相続人申告登記」という簡易な手続きを利用することで、ひとまず登記義務を果たしたとみなされます。

これは、自分が相続人の一人であることを法務局に申し出る制度です。ただし、これはあくまで一時的な措置であり、権利関係を確定させるものではありません。その後、遺産分割が成立した際には、その日から3年以内に改めて正式な相続登記を行う必要があります。

まずは司法書士にご相談ください

相続手続きは、一人っ子であっても複雑で時間を要することが少なくありません。特に、相続登記の義務化により、期限内に手続きを完了させる重要性が増しています。

司法書士は、相続登記の専門家です。以下のような業務をすべて代理人として行うことができます。

  • 面倒な戸籍謄本の収集
  • 法定相続情報一覧図の作成
  • 遺産分割協議書の作成サポート
  • 法務局への登記申請

一人で悩まず、まずは専門家である司法書士にご相談いただくことが、スムーズで確実な相続手続きへの第一歩です。

はながすみ司法書士事務所では、相続登記や遺産整理のご相談を随時承っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事は司法書士が監修しております。

司法書士 石山健二

相続の累計問合せ件数4,479件(2023年末まで)と実績が豊富で、相続に特化するはながすみ司法書士事務所の所長。相続は丁寧な説明が必要というのがモットーで、相続の幅広い知識と経験を基にした顧客本位の相談対応をワンストップで行っている。

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