相談事例:税理士に相続手続を依頼したが、家の登記がされていなかった
解決事例ダイジェスト
相続登記(不動産の名義変更)には、遺産分割協議書が必要になります。当時の資料が無い場合には、相続人の皆様の協力を得られる場合には、遺産分割協議書を再作成して、相続登記を行います。但し、当時の合意(遺産分割協議)内容と異なる内容で登記を行ってしまうと、贈与税等が掛かる場合もありますので、遺産分割協議書を再作成は、慎重に行います。
相談内容
以前、税理士に相続手続きをお願いしていたのですが、家の登記がされていない事が判明しました。
今からでも遅くはありませんか?
当時、税理士が作成した書類は使えますか?
当事務所の対応
相続に必要な書類は、大体のものが、期間制限はありません。
そこで、まず、税理士作成の書類をチェックしたところ、全てコピーで原本が無い事が分かりました。
このままでは、手続きが進められないため、他の相続人に協力してもらえるかどうかを依頼人に確認して頂きましたところ、
今回は、相続人全員が協力してくれるという事でした。
当事務所で相続登記を行う場合には、一般的には以下の書類が必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 被相続人の住民票の除票(本籍・筆頭者の記載のあるもの)
- 相続人全員の戸籍・住民票(本籍・筆頭者の記載のあるもの)・印鑑証明書
- 固定資産税の評価証明書・名寄帳
- 相続人全員の身分証明書のコピー
- 登記簿・各種図面・権利証等
今回のケースでは、遺産分割協議書のコピーがあり、当時、どの様な合意があったのかが分かりましたので、当事務所で遺産分割協議証明書を作成しました。細かいことですが、『当時、この様な遺産分割協議が行われましたよ』という報告形式の書類のため、遺産分割協議書ではなく、遺産分割協議証明書になります。
当事務所で作成した遺産分割協議証明書に相続人全員に再度実印で押印してもらい、新たに相続人全員の印鑑証明書を添付して、無事、相続登記を完了させる事が出来ました。
司法書士からのコメント
やはり相続人の皆様で被相続人(亡くなった方)の遺産の分け方が決まったら、速やかに手続きをすることをお勧めしておりますが、長年放置されてしまっているというケースもあります。
その場合でも、以前作成した資料があれば、当時の資料を活用して手続きを進めることが可能です。銀行の手続き等は、発行後3ヶ月とか6か月と言われることが多いですが、相続登記の場合には、書類の有効期限はありませんので(但し、被相続人が亡くなった後に発行された書類でなければなりません。)、当時の書類を使うことも可能です。
コピーでは手続きがとれませんので、原本である必要がありますが、コピーも当時の有力な資料の1つですので、コピーがある場合には、手続きの際には必ず持参する様にして下さい。
相続税の申告を行っていた場合、相続税の申告のとおりに不動産の名義変更を行う必要があります。例えば、父が亡くなり母が自宅を相続したという相続税の申告書を提出しているのに、長男に相続登記を行ってしまうと、贈与税が発生してしまうかも知れません。