遺産分割協議書の書き方【書式(テンプレート)つき】
遺産分割協議がまとまったら、「遺産分割協議書」を作成しましょう。
遺産分割協議書とは、遺産分割協議の内容を記した書面です。
不動産の名義変更や預金の払戻など、各種の相続手続きに必要な重要書類なので、正しい作成方法を押さえておきましょう。
以下で遺産分割協議書の書き方のポイントを書式(ひな形、テンプレート)付きで解説します。
1.遺産分割協議書のサンプル
まずは遺産分割協議書のサンプルを示しますので、ご確認ください。
相続人が2人いて、そのうち1人が不動産を相続する内容となっています。
2.遺産分割協議書に書く内容
遺産分割協議書には、一般的には以下の内容を記載します。かっこ書き部分の記載は任意です。
- 死亡した人の氏名、住所、本籍、死亡年月日
- タイトル
- 相続人の氏名、(続柄)、住所
- 相続財産の分け方
- (残余財産の取得者)
- (代償金の支払いについて)(代償分割)
- (新たに遺産が発見された場合の対応)
- 日付
- 相続人全員の署名押印
以下で個別にみていきましょう。
2-1.タイトル
まずは冒頭に「遺産分割協議書」というタイトル(書面の名称)を書きます。
2-2.死亡した人の氏名、住所、本籍、死亡年月日
次に死亡した人の氏名や住所、最後の本籍地、死亡年月日を記載します。ここを間違えると「誰の相続」かがわからなくなり、書面を作成する意味がなくなる可能性もあるので慎重に書いてください。
また一般的には、死亡した人を「被相続人」と表記します。
2-3.相続人の氏名、続柄、生年月日
相続人全員の氏名や被相続人との続柄(配偶者、長男などの関係性)を記載します。
2-4.相続財産の分け方
遺された不動産などの遺産について、誰が何を相続するのかを書いていきます。
相続財産の表記を間違えると、法務局で不動産の名義変更を受け付けてもらえなかったり金融機関で預金の払い戻しを受けられなかったりするので、正しく記載しなければなりません。
以下で財産別の遺産分割協議書への具体的な表記方法とひな形を記載します。
不動産の場合
不動産の場合には「全部事項証明書(不動産登記簿謄本)」の「表題部」の部分を引き写しましょう。住所の表示とは異なるので、注意してください。必ず法務局から全部事項証明書を取り寄せて「表題部」と書かれている部分を確認する必要があります。
【参考書式】
花霞一郎が土地建物を相続する場合の記載例
相続財産中、次の不動産については花霞一郎が相続する
土地
所在 八千代市ゆりのき台一丁目
地番 35番
地目 宅地
地積 100.00平方メートル
建物
所在 八千代市ゆりのき台一丁目35番地
家屋番号 35番
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階75.00平方メートル
2階75.00平方メートル
配偶者居住権を設定する場合
配偶者居住権は、相続法改正によって新しく作られた権利です。
配偶者が被相続人の死亡時に本人と同居していた場合、「配偶者居住権」という「家に住み続ける権利」を遺産分割協議により取得できます。
配偶者居住権を取得すると、配偶者は所有権を相続しなくても家に住み続けられます。所有権と配偶者居住権を分けることにより、配偶者が他の相続人(子どもなど)に代償金を払わずに済む場合があるなどのメリットがあります。
残された配偶者の生活が守られやすくなる仕組みといえるでしょう。
【参考書式】
花霞和子が配偶者居住権を遺産分割協議により取得する場合の記載例
相続人花霞和子は、相続開始時に居住していた次の建物の配偶者居住権を取得する。配偶者居住権の存続期間は本遺産分割協議成立の日から花霞和子の死亡日までとする。
建物
所在 八千代市ゆりのき台一丁目35番地
家屋番号 35番
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階75.00平方メートル
2階75.00平方メートル
預金の場合
預金の場合には、金融機関名と支店名、預金の種類、口座番号を正確に引き写しましょう。間違うと預金の払戻や名義変更を受け付けてもらえない可能性があります。
残高証明書を取得するのが一番好ましいですが、残高証明書を取得しない場合には、通帳の表紙を確認したり、ネット銀行の画面、キャッシュカードを見たりして間違えないように記載してください。
【参考書式】
花霞まり子が預金を相続する場合
以下の預金は相続人花霞まり子が相続する。
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
△△銀行△△支店 定期預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
株式の場合
株式の場合には、発行会社名や株式数を記載します。預けている証券会社名・支店名口座番号も書いておくとわかりやすくなります。証券会社から明細を問い合わせたり、ネット証券の画面で確認したりしましょう。
【参考書式】
花霞次郎がA株式会社の株式を相続する場合
以下の株式は相続人花霞次郎が相続する
〇〇証券〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇〇の被相続人名義の株式
△△株式会社 株式1000株
2-5.残余財産の取得者
遺産分割協議書を作成するときには「すべての遺産」について相続方法を指定すべきです。
記載のない財産があると、後日に誰が相続するのか明らかにならずトラブルになる可能性があるためです。
ただ細かい遺産については、個別に相続人を指定しきれない場合もあるでしょう。
そういったケースでは「ここに記載されている以外のすべての遺産は相続人〇〇〇〇が相続する」などと書いておくと便利です。
2-6.代償金の支払い(代償分割)について
不動産や株式を相続した場合、受け継いだ相続人が他の相続人へ「代償金」を払って清算するケースがあります。この様な遺産分割協議の方法を代償分割と言います。代償金とは、不動産などの大きな遺産を引き継いだ相続人が、他の相続人に対して支払う清算金です。1人が高額な資産を相続すると他の相続人との間で不公平になるので、代償金の支払いによって清算します。たとえば兄が1,000万円の不動産を相続した場合、弟へ500万円の代償金を払えば公平に相続ができます。
なお代償分割の際の代償金は何円でもよいわけではありません。資産価値を評価して正しく計算する必要があります。自分たちで代償分割の遺産分割協議書を作成するのが難しい場合には、司法書士などの専門家へ相談しましょう。
【参考書式】
代償金を支払う場合における遺産分割協議書への記載方法(代償分割)は、以下のようになります。
相続人〇〇は第1項に記載した遺産を取得する代償として、金〇〇円を相続人△△に対し令和3年○月○日までに支払う
2-7.新たに遺産が発見された場合の対応
遺産分割協議の成立後、新たに見落としていた遺産が発見される可能性もあります。そういったケースでは、あらかじめ「誰が新たな遺産を取得するのか」明らかにしておくとトラブル防止になります。
2-8.日付
遺産分割協議書には、必ず作成日付を入れなければなりません。
2-9.相続人全員の署名押印
遺産分割協議書を有効なものとするには、必ず「相続人全員の署名押印」が必要です。1人でも欠けると無効なので、注意してください。
また押印は「実印」で行い、全員分の印鑑登録証明書をつけるようお勧めします。そうすると、不動産の名義変更などの手続きをスムーズに進めやすくなります。
3.遺産分割協議書の用紙、形式、パソコン利用について
次に遺産分割協議書に使う用紙や文房具、形式などについて解説します。
3-1.用紙、方向
紙の大きさに制限はありません。あまり大きすぎたり小さすぎたりすると読みにくく保存もしにくいので、A4やA3サイズを利用するのが良いでしょう。
方向は縦書きでも横書きでもかまいません。
3-2.文房具、作成ツール
遺産分割協議書の作成ツールにも特に制限はありません。ボールペン、油性ペン、毛筆、万年筆などで手書きしてもかまいませんし、パソコンも使えます。
ただし鉛筆やシャープペンシルや消えるボールペンは利用しないでください。
3-3.署名押印
相続人全員が遺産分割協議書に署名し、実印を押印してください。
このとき必ず、相続人「本人」に署名してもらいましょう。代理署名や代印をすると、後にトラブルになるリスクが高くなります。
また住所や氏名は、「印鑑証明書」に記載されているとおりに記載するのが望ましいです。
署名押印のもらい方
遺産分割協議には「相続人全員の署名押印」が必要です。
しかし相続人が全国に散らばっていて一堂に会することが困難な場合や、出歩くのが難しい相続人がいるケースもあるでしょう。
そういったケースでは、郵送で遺産分割協議書への署名押印を集める方法がお勧めです。
遺産分割協議書を順番に送り、各自が署名押印して次の相続人へ送付する、といった対応を繰り返せば、全員が集まれなくても遺産分割協議書が完成します。
遺産分割協議証明書について
遺産分割協議書ではすべての相続人が署名押印する必要があります。しかし各相続人がそれぞれ遠方に居住しており、全員分の署名押印を集めにくいケースもあるでしょう。
そういった場合には、「遺産分割協議証明書」を作成する方法が便利です。
遺産分割協議証明書は、遺産分割の内容を記載した書類ですが、各相続人がそれぞれ1通ずつ作成します。署名押印もそれぞれの相続人1人分で済むので、1つの書類を全国で順番に郵送する必要はありません。
相続人が多数であったり全国に散らばっていたりして署名押印を集めにくい場合、「1枚に1人が署名押印」できる遺産分割協議証明書を利用するのがよいでしょう。
3-4.契印、捨印
遺産分割協議書を作成するとき「契印」や「捨印」が必要となるケースがあります。
契印とは
契印とは、遺産分割協議書のページ数が複数になる場合、ページとページの間をつなぐ印鑑です。署名押印のないページの差し替えなどを防ぐために契印を行います。
基本的にはすべてのページとページの間に契印する必要がありますが「製本」されている場合には差し替えができないので、表紙と裏表紙の製本部分に押印すれば、かまいません。また契印は相続人全員分が必要で、印鑑は署名押印に使ったのと同じ実印を利用する必要があります。
捨印とは
捨印とは、間違ったときに訂正印の代わりに使うためにあらかじめ余白部分に押しておく印影です。
遺産分割協議書に間違いが発見されたら、本来であれば全員が訂正印を押さねばなりません。特に法務局では、少しの記入ミスでも訂正を求められます。
しかし間違いが発見されてから全員分の訂正印を集めるには大変な手間がかかるでしょう。そこであらかじめ全員分の捨印を押しておき、万一の間違いに備えておくのです。
捨印も全員分が必要になるので、署名押印に使ったのと同じ実印で余白部分に押してもらうようにしましょう。捨印を押すのをどうしても拒絶する相続人がいるときは、特に念入りにチェックして間違いがないことを確認する必要があります。
また署名の後ろに捺印する実印は、印影を明らかにするために鮮明に押印しましょう。
3-6.日付
遺産分割協議書に入れる日付は以下の日にちとします。
- 遺産分割協議で全員が合意した日
- 最後に署名した相続人が署名した日
上記のどちらでもかまいません。
4.遺産分割協議書作成は司法書士へ相談を
遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預金払い戻しにも必要となる重要書類です。間違った方法で作成すると、やり直しが必要となったりトラブルにつながったりします。
とはいえ「作成方法がわからない」「相続人全員の署名押印を集めるのが面倒」といった方もおられるでしょう。
そんなときには司法書士へ遺産分割協議書の作成を依頼してみてください。司法書士は不動産登記も代行できるので、遺産に不動産が含まれている場合には特にお役に立てると考えます。
当事務所は遺産相続案件に力を入れて下り、遺産分割協議書の作成を始めとして相続人調査、相続財産調査、登記申請など各種相続手続きを承っておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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