相続放棄に関する相談事例6:戸籍が複雑だったが、無事相続放棄ができた事例
解決事例ダイジェスト
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄申述書と戸籍等を提出する必要があります。(民法第915条第1項)
提出しなければならない戸籍等の範囲は、それぞれの家庭裁判所で異なります。(私の感覚では、同じ裁判所でも担当する裁判所書記官によって、違うことを言われることもあると考えております。)
裁判所のHPで記載されている添付書類は、最低限提出しなければならないものと考えて、裁判所書記官から追加書類の提出を求められた場合には、速やかに対応しなければなりません。当事務所では、大体、裁判所が必要と言ってくる書類の範囲が、ケースごとに分かっておりますので、予め、裁判所が必要と考える書類の範囲を先回りして取得してしまうことが殆どです。
今回のケースでは、結婚と離婚を繰り返しており、本籍も何度も転籍していたため、全て速達郵便で戸籍等を請求して、合計10通程戸籍を取得し、期限の3か月に間に合う様に家庭裁判所に申し立てを行い、無事、相続放棄の申述が受理されました。
相談事例
父が死亡しましたが疎遠だったため、今後のことが心配です。
万が一のことを考えて相続放棄を行いたいと思いますが、父は戸籍が複雑だったため、自分で手続きを行っても、間に合うかどうか分かりません。
相続放棄の手続きをお願いしたいです。
当事務所の対応
相続放棄には、被相続人の戸籍と住民票を添付する必要があるため、被相続人の本籍と住所の調査を行います。
そして、相続人との関係性を調査致します。
通常であれば、それ程時間は掛からないのですが、今回は、家族間で複雑な事情があったため、戸籍の調査を全て速達で行い、3か月の期間内に、無事、手続きを完了させました。
解決までの流れ
1.お亡くなりになられた方の戸籍と住民票を取得しました。
2.被相続人と相続人の関係性の分かる戸籍の調査を速達で行いました。
※合計で10通以上になりました。
3.相続放棄申述書を作成し、依頼人に押印して頂きました。
4.当事務所が家庭裁判所に相続放棄申述書を提出致しました。
5.家庭裁判所から依頼人の許に「照会書」が届き、作成の支援を致しました。
6.無事、相続放棄の申述が受理され、相続放棄申述受理証明書を請求し、取得致しました。
司法書士からのコメント
家庭裁判所に相続放棄の申し立てをする場合、戸籍等の添付書類は、どうしても3か月の期間に取得が間に合わない場合には、申し立ての際に付箋等で足りない書類は後から追加する旨を記載しておいて、後から追加でも構いません。
但し、被相続人(亡くなった方)と疎遠な方の場合、被相続人の最後の住所も分からず、被相続人の本籍も分からないというケースも多々あります。
その場合、ご自身の現在の戸籍から被相続人の亡くなられた時の戸籍まで辿っていく必要があり、ご自身が結婚・離婚や転籍(本籍を変更すること)を繰り返していたり、被相続人が結婚・離婚や転籍(本籍を変更すること)を繰り返していると、その都度の戸籍を取得する必要があり、戸籍の通数がかなり多くなることがあります。
そして、良い話ではありませんが、闇金等、あまり筋の良いところでは無いところからお金を借りている方は、お金を借りるための条件として、本当に夫婦関係があるのか疑わしい様な方と、結婚・離婚を繰り返していることもあり、そういった方のケースでは、取得しなければならない戸籍の通数が、かなりの通数になってしまうこともあります。
今は難しいのかも知れませんが、サラ金等で一旦ブラックリストに載ってしまったことを回避してまた借金をするために、苗字を結婚により、度々変更するという方もおりました。
相続放棄を行う場合には、原則、被相続人の最後の住所を調べる必要があり、住民票や戸籍の附票を取得して調査するのですが、亡くなられた時の本籍が分からないと最後の住所を調査することが出来ず、提出する家庭裁判所の管轄が分からないということもあります。
どうしても3か月以内に最後の住所が分からないという方の場合、当事務所では、依頼人によく説明した上で、管轄の間違いを覚悟の上で、東京家庭裁判所に相続放棄の申し立てを行ってしまいます。(家事事件手続規則第6条で、管轄が定まらない場合には、東京都千代田区を管轄とする家庭裁判所の管轄に属するという規定があるためです。)
しかし3か月以内に最後の住所を住民票や戸籍の附票を取得して調査出来るのであれば、最後の住所を調査した上で申し立てをした方が万全だと思います。
戸籍の請求を行う場合、当事務所では速達郵便で行います。最も早く戸籍を取得する方法は、それぞれの本籍地の市役所まで行って取得する方法だと思いますが、日当交通費が掛かってしまいますので、当事務所では、費用対効果の関係上、全件速達郵便で書類を請求しております。