相談事例:準確定申告が必要なのかどうか分かりません
解決事例ダイジェスト
被相続人(お亡くなりになった方)が、毎年確定申告を行っていた場合、亡くなった後に準確定申告を行わなければならない場合があります。
例えば、賃料収入がある方等が典型例です。
今回は、収入は年金のみで、年金収入が400万円以下だったため、準確定申告は不要でした。
不動産の相続登記が必要な方は、司法書士事務所に問合わせを頂ければ、通常、提携している税理士がおりますので、提携している税理士に準確定申告の要否については確認することが可能です。当事務所でも、提携している税理士が複数おりますので、各種税金のお問合せについても、提携している税理士が対応可能です。
相談内容
準確定申告が必要なのかどうか分かりません。不動産の名義書換えもしなければなりません。
司法書士と税理士、どちらにお願いすれば良いですか?
当事務所の対応
お亡くなりになった方は、年金生活で、年金額も400万円以下だったため、準確定申告は必要ないと思われましたが、念のため、当事務所と提携している税理士に準確定申告の要否を確認し、不要である事が判明しました。
不動産については、土地と建物をお持ちでしたので、当事務所で相続登記を行い、無事、全ての相続手続きが完了致しました。
司法書士からのコメント
賃料収入等があり、毎年確定申告を行っていた方が、年の途中でお亡くなりになった場合、その年の1月1日から亡くなられた日までの所得について、亡くなられた日から4か月以内に確定申告を行う必要があります。この確定申告のことを準確定申告と言います。
良くある勘違いとしては、年金収入のみで、年金収入の合計額が400万円以下の方の場合、準確定申告は不要です。
年金収入が400万円以下で、所得税が年金から天引きされていた方が、掛かった医療費を申告して、所得税の還付を受けるために、毎年、確定申告を行っているケースがあります。
この場合、相続人は、同じように準確定申告を行えば、所得税の還付を受けることが可能ですが、準確定申告が面倒であれば、準確定申告を行う必要はありません。(但し、所得税の還付は受けられません。)
乱暴な言い方をすれば、所得税の還付金額がそれ程高くなく、準確定申告の手間の方が大変と考えた場合には、上記事例では、準確定申告を行わなくても問題ありません。所得税の還付される金額のMAXは、源泉徴収票の源泉徴収税額をチェックすると確認出来ますので、源泉徴収税額を確認して、準確定申告を行うかどうかを検討すると良いかもしれません。税金が戻ってくることを還付と言いますが、還付の場合は、亡くなられた日から4か月以内に準確定申告を行うことは必須ではありません。5年以内であれば、還付は可能ですので、5年以内に準確定申告を行えば良いということになります。
上記とは異なり、賃料収入がある方で、賃料が少ないという理由で、準確定申告を行わない方がおります。この様なケースでは、原則、準確定申告が必要となりますので、注意が必要です。
被相続人が年金受給者の場合、年金収入が400万円以下で、その他の所得が20万円以下の場合には、準確定申告が不要です。賃料収入のことを不動産所得と呼びますが、不動産所得が20万円を越える場合には、準確定申告が必要になりますので、注意が必要です。
上記の様なケースでは、過去もずっと確定申告を行っていないというケースが多いと思います。その場合、過去5年分、遡って確定申告を行わなければならない場合もあります。
その際、影響が生じるのは、所得税と住民税だけはありません。所得を基準としている様々な制度に影響が出ます。例えば、介護保険サービスや医療費等です。医療費を1割負担で支払っていた方等は、過去の不動産所得を計上することにより、過去の医療費が1割負担ではなく3割負担が相当だったというケースもあるかも知れません。その場合、過去にさかのぼって2割負担分の差額の請求がされる可能性もあり得ます。税理士等の話では、過去の申告を遡って行った結果、所得税と住民税以外で、数百万円の請求が来たというケースも聞いたことがありますので注意が必要です。
不動産の名義変更が必要な方の場合、司法書士事務所にご相談頂ければ、通常、知り合いの税理士が複数おりますので、事案に応じた税理士の紹介が可能だと思います。
司法書士事務所が暇とは申しませんが、税理士事務所はとても忙しいので、司法書士事務所と比較して、一般の方にとっては、相談のハードルが司法書士事務所よりも更に高いかも知れません。その際は、不動産の名義変更について、まず最寄りの司法書士事務所にご相談頂き、併せて司法書士から一般的な準確定申告の仕組みについて教えてもらった後、必要であれば、事案に応じた適切な税理士を紹介してもらうというのがスムーズな流れかと思います。