【2026年民法改正】成年後見制度はこう変わる|終身制廃止・補助への一本化を司法書士が解説

2026年6月、認知症や障害などで「物事を判断する力」が弱くなった人を支える成年後見制度を大きく見直す改正民法が成立しました。2000年に制度が始まって以来、約26年ぶりの大きな改正です。
この改正のポイントは大きく3つあります。
1つ目は、「終身制」の廃止。これまでは制度を一度使い始めると、本人が亡くなるまで続くのが原則でしたが、改正後は目的が済んで「もう支援は必要ない」と家庭裁判所が認めれば、途中で終われるようになります。
2つ目は、3種類あった制度を「補助」に一本化したこと。これまでの「後見」「保佐」「補助」という区分をなくし、「どの手続きを手伝ってもらうか」を必要な分だけ決める“オーダーメイド型”に変わります。
3つ目は、「特定補助」の新設。判断する力がとくに大きく低下した人のために、家庭裁判所が認めれば、重要な取引を後からやり直せる強い権限(取消権)を特定補助人に与える枠組みが用意されます。特定補助人とは、こうした手厚い保護が必要な本人を守るために選ばれる、専用のサポート役のことです。
「成年後見の制度が変わるまで待ったほうがいいの?」と思うかもしれません。しかし、その答えは一人ひとりの状況によって変わります。相続・成年後見を専門とする司法書士が、改正の中身と「今すべきこと」を整理してご説明します。
1.なぜ成年後見制度が改正されるのか
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断する力が弱くなった人を、法的に守るための仕組みです。家庭裁判所が選んだ後見人などが、本人に代わって預貯金の管理や契約の手続きを行います。大切な制度ですが、長い間「使いにくい」という声がありました。
問題点は主に3つでした。
1つ目は、一度利用を始めると本人が亡くなるまで続くのが原則だったこと(終身制)。
2つ目は、たとえば遺産分割のためだけに使いたくても、日常の財産管理まで丸ごと任せることになり、本人が自分でできることまで制限されてしまう「融通のきかなさ」。
3つ目は、専門家への報酬など、費用の負担が何年も続くことです。
認知症の高齢者が数百万人(2022年時点で約443万人)いるとされる一方で、制度の利用者は約26万人にとどまっており、こうした使いにくさを改める必要がありました。
(出典)認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究|厚生労働省/成年後見関係事件の概況(令和7年)|最高裁判所
2.変更点1:終身制の廃止 ―「終われる後見」へ
改正の目玉の1つが、事実上の「終身制」の見直しです。改正後は、「必要があるときだけ使い、必要がなくなれば終われる」という考え方が採り入れられます。
たとえば実家の売却や遺産分割といった目的が済み、家庭裁判所が「もう支援は必要ない」と認めれば、制度を途中で終わらせることができるようになります。
あわせて、補助人が年に1回、家庭裁判所へ状況を報告する義務が設けられ、これをもとに「まだ支援が必要か」を定期的に確認する仕組みが検討されています。補助人とは、本人を支えるために家庭裁判所から選ばれるサポート役のことです。
3.変更点2:3類型(後見・保佐・補助)を「補助」に一本化
これまでの制度は、判断する力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれていました。改正後は、このうち「後見」と「保佐」を廃止し、「補助」に一本化します。
ねらいは、一人ひとりの状況に合わせて支援の中身を細かく決められるようにすることです。具体的には、「どの手続きを代わりにやってもらうか(代理権)」「どの契約にサポートを付けるか(同意権)」を、必要な範囲だけ設定します。
しかも、その設定には原則として本人の同意が必要になります。本人にできることは本人に任せ、足りない部分だけを支える「オーダーメイド型」への転換といえます。
なお、この「本人の同意が必要」という原則には、例外もあります。判断する力が大きく低下し、本人が同意の意思を示すこと自体が難しい場合には、支援の必要性をよく検討したうえで、例外的に本人の同意なしで制度の利用を認める規定も設けられています。
あくまで原則は「本人の同意」ですが、同意を示せない方が制度から取り残されないように、という配慮です。
4.変更点3:後見人の交代が柔軟に
これまでは、いったん選ばれた後見人など(本人に代わって財産管理などを行う人)を途中で代えるには非常に厳しい条件があり、よほどのことがない限り交代は難しいものでした。
改正後は、「本人の利益のためにとくに必要がある」と認められれば、補助人などのサポート役を変更しやすくなります。
あわせて、サポート役は本人の希望をよく聞き、その意思を尊重して動かなければならない、という点もこれまで以上に重視されます。本人とサポート役の相性が合わなかったり、状況が変わったりしたときでも、無理なく見直せる体制が整えられます。
5.変更点4:「特定補助」の新設
制度を「補助」にまとめる一方で、判断する力がとくに大きく低下している人の保護が弱くならないよう、「特定補助」という新しい枠組みが設けられます。
これは、本人が常に判断の難しい状態にあり、かつ幅広い守りが必要な場合に限って、家庭裁判所が認めれば「特定補助人」に、重要な財産に関する行為を後からやり直す権利(取消権)を与える仕組みです。
誰にでも一律に強い制限をかけるのではなく、本当に守りが必要な場面を見極めたうえで、手厚い保護を用意する設計になっています。
6.相続実務への影響|遺産分割のためのスポット利用がしやすくなる
相続の現場では、「遺産分割の話し合いをしたいだけなのに、後見人を付けたら一生外せない」という悩みがよくありました。改正後は、遺産分割協議など特定の目的に限って、必要な期間だけ利用する「スポット利用」がしやすくなると期待されています。
これまでは、後見人と本人がどちらも相続人の場合、お互いの利益がぶつかる「利益相反」となり、別に「特別代理人」を立てるなど、手続きが複雑になりがちでした。「必要な範囲で、必要な期間だけ」使えるようになれば、相続の手続きもよりスムーズに進められるようになるでしょう。
7.いつから始まる?施行スケジュール(2年6カ月以内)
ここで大切な注意点があります。改正法は成立・公布されましたが、実際にルールが動き出す日(施行日)はこれからです。今回の改正は、一部を除いて公布から「2年6カ月以内」に施行されることになっています。
改正法は2026年6月に成立・公布されたため、新しい制度が実際に使えるようになるのは、早くても2028年ごろの見込みです。それまでの間、家庭裁判所や自治体などが、新しい診断書の様式づくりや福祉との連携など、実務の準備を進めていきます。「明日からすぐ変わる」わけではない点に注意してください。
8.改正を待つべき?今すべき備え
「便利になるなら、施行まで待とう」と考える方もいるかもしれません。しかし、それが必ずしも得策とは限りません。
改正を待たず今すぐ動いた方がよいケース
すでに相続手続きが必要な方や、空き家の売却を急いでいる方は、今の制度を使ってすぐ動いたほうがよい場合があります。判断する力は、待っている間にも少しずつ低下することがあり、そうなると必要な手続きが取れなくなるおそれがあるからです。急ぐ事情があるなら、施行を待たず、現行の制度で早めに準備を始めましょう。
判断能力があるうちにできる事前対策(任意後見・家族信託)
まだ判断する力がしっかりしているなら、将来に備えて、「任意後見」という契約が有効です。
これは、元気なうちに「将来サポートしてくれる人」を自分で選んでおく仕組みです。財産の管理方法を家族に託す「家族信託」と組み合わせる方法もあります。任意後見は今回の改正でも、本人の自発的な意思を尊重する仕組みとして、いっそうの活用が期待されています。
≫成年後見を司法書士に依頼するメリット
まとめ|「生前の安心」を早めに準備
2026年の改正によって、成年後見制度は「本人の意思」をより大切にし、「必要な分だけ」使える身近な制度へと変わっていきます。制度の一本化や「終われる後見」の導入は、これまで利用をためらってきた方にとっても安心材料になるでしょう。
ただし、家族の状況や財産の内容は一人ひとり異なります。改正を待つべきか、今の制度で先に備えるべきかは、専門的な判断が欠かせません。将来の不安を安心に変えるために、まずは早めに司法書士へご相談ください。
相続・遺言・成年後見のご相談は、はながすみ司法書士事務所へ
今回の民法改正は、成年後見と遺言という、人生の「生前」と「死後」の両方にかかわる大きな制度変更です。「何から準備すればいいか分からない」「うちの場合はどうなる?」——そんな不安をお持ちの方は、まずお気軽にご相談ください。
八千代・佐倉エリアで相続・遺言・成年後見の解決実績が豊富な司法書士が、お一人おひとりの状況に合わせて、今からできる備えを分かりやすくご案内します。
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9.よくある質問
成年後見制度の改正はいつから始まりますか?
改正法は2026年6月に成立・公布されました。ただし、実際にルールが動き出す日(施行日)は、一部を除いて公布から「2年6カ月以内」に定められることになっています。そのため、新しい制度が使えるようになるのは早くても2028年ごろの見込みです。今すぐ変わるわけではない点にご注意ください。
「補助」への一本化で何が変わりますか?
これまでの「後見」「保佐」「補助」という3つの区分がなくなり、すべて「補助」という枠組みにまとまります。これにより、家庭裁判所が「この人には、この手続きの代理権が必要だ」と個別に判断するようになり、画一的ではない、本人にぴったり合った“オーダーメイド型”の支援ができるようになります。
民法改正を待ってから成年後見の申立てをした方がよいですか?
健康状態やご事情により、申立てすべき時期は変わります。今すぐ遺産分割を進めたい、あるいは本人を守るために急ぎたいという場合は、改正を待たず、現行の制度で申し立てるべきケースが多いです。待っている間に判断する力が低下すると、どの方式でも有効な手続きが取れなくなるおそれがあるためです。個別の事情については、法律の専門家にご相談ください。
≫次回のコラムで【2026年民法改正】デジタル遺言(保管証書遺言)を司法書士が解説|押印廃止・スマホで作成可を公開予定です。しばらくお待ちください。




































































