もうちょっと早く相続の相談に来てもらればよかったと思う事例2
相続の相談を受けている時に、『もう少し早く相談に来てもらえればよかったのに』と内心思うことが多々あります。事例をあげるときりがないのですが、ここでは、典型例を2回に分けて、紹介していきたいと思います。(今回は、2回目です。)
相続人の中に認知症の方がいるケース
相続が発生すると、遺言書がない場合、原則、相続人の皆様で話し合いをして(法律上は、この話し合いを遺産分割協議と言います。)、誰が財産を相続するのか決定する必要があります。
相続人の中に認知症の方がいて、この話し合いが出来ない場合、相続手続きが進まなくなってしまいます。
困ってしまう典型例をあげます。
- 被相続人(亡くなった方)Aさん
- 相続人 妻Bさん
- 相続人 子Cさん
※妻Bさんは、認知症で、今まで被相続人Aさんが、同居をして面倒をみていました。
上記の例で、Aさんが亡くなったため、認知症の妻Bさんは、一人暮らしが難しく、急いで施設を探さなくてはならないけれど、今後の施設利用料は、被相続人Aさんの不動産(自宅の土地・建物のことです。)を売却しなければ、捻出が難しいといった事情が生じます。
そう致しますと、法律的な話をすると、遺言書が無い場合、妻Bさんと子Cさんで話し合いをして、誰が不動産を相続するかを決定しなければなりません。
この時、認知症の妻Bさんは、認知症の程度にもよるかと思いますが、一般的には、話し合いをすることが難しいのではないかと思います。その場合、家庭裁判所で成年後見人を妻Bさんのために選任する必要があります。
成年後見人とは、判断能力が衰えてきた方の法的なサポートをする人で、家庭裁判所が申立てにより選任します。成年後見人は、基本的には、妻Bさんが亡くなるまで業務が続きます。そして、司法書士等の専門家が成年後見人に選任された場合、毎月報酬が発生します。
このケースでは、解決のためには、妻Bさんのために成年後見人を選任して、成年後見人と子Cさんの間で遺産分割協議を行い、不動産を名義変更した後、売却を行う必要があります。(売却も簡単には出来ず、家庭裁判所の許可が必要になることがありますが、ここでは、話の内容がぶれてしましますので省略します。)
『じゃあ生前にAさんはどうしたら良かったの?』という疑問が生じると思います。
この様なケースでは、Aさんは生前に、以下の選択肢があります。
- 遺言書の作成
- 民事信託・家族信託
- 生前贈与
ここでは、細かい内容は省略しますが、簡単に触れたいと思います。
遺言書の作成の場合、子Cさんに不動産を相続させるという遺言書を作成する方法があります。子Cさんに不動産を相続させる遺言書があれば、子Cさんのみで不動産の名義変更を行うことが出来、子Cさんのみで不動産を売却することが出来ます。
民事信託・家族信託の場合、受託者(不動産を任せる人)を子Cさんに設定して、Aさんの生前に子Cさんに不動産を名義変更して、受益者(不動産を使用したり、売却代金を受け取る人)をAさん存命の内はAさん、Aさんが亡くなった後は、妻Bさんと設定しておく方法があります。
こちらも不動産は、子Cさんに名義変更されておりますので、子Cさんのみで不動産を売却することが出来ます。
生前贈与は、子Cさんに不動産を生前贈与して、不動産を名義変更しておくという方法です。
こちらは、一番シンプルですが、やはり不動産は、子Cさんに名義変更されておりますので、子Cさんのみで不動産を売却することが出来ます。
Aさんがご存命の際、Aさん自身から、妻Bさんのことを心配して、ご相談を戴くというケースがあり、上記のお話をさせて戴きますが、いずれの方法も一長一短ありますので、ご相談を戴いても結論を出せずに、結局は、何もせず、相続が発生してしまうということも多いです。
この様なケースでは、Aさん自身では結論を出しづらい場合、子Cさんにも同席を戴いて内容を説明させて戴くことが大切なのですが、どうしても子Cさんは忙しいからといった理由で、Aさんのみで、相談を受け、結論を出せないということがあります。
相続が発生してからでは、どうしても選択肢が狭まりますので、可能であれば、お子様も同席の上で、今後について打合せが出来ることが望ましいのではないかと思います。
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