財産の評価 (不動産:土地)
ここでは、被相続人が自分で利用していた土地(自用地といいます)を前提として、
土地の評価方法を説明します。
自用地の評価にあっては、その土地の地目ごとに評価方法が異なります。
具体的な地目としては、
宅地・田・畑・山林・原野・牧場・池沼・鉱泉地・雑種地があります。
地目は登記簿謄本等に記載されていますが、登記簿上地目は「畑」であっても、実際には家屋を建て「宅地」として利用しているケースもあります。
このような場合には実際の利用区分で評価することとなるため、土地の評価としては「宅地」として評価をします。
※これから先は、土地の利用区分が「宅地」であることを前提として説明します。
(宅地の評価:路線価方式と倍率方式)
宅地を評価するにあたっては、その宅地の所在地によって「路線価方式」又は「倍率方式」のいずれかによって評価をします。
どちらの方式で評価すべきかは、国税庁のホームページの「路線価図」又は「評価倍率表」を確認することで判断します。
(宅地の評価:路線価方式による評価方法)
路線価方式が採用される地域の道路には、その道路に面した宅地1㎡当りの価額が定められており、これを路線価といいます。
路線価は、毎年7月初めに国税庁が公表します。
路線価方式による宅地の評価方法は、まずその宅地の所在地の路線価図を国税庁のホームページなどから入手します。
路線価は前述の通り、その道路に面した宅地1㎡当りの価額ですので、これを被相続人が保有していた宅地の面積に乗じて求めます。
具体的な評価方法は、
路線価×奥行補正率(注)×宅地の面積 となります。
(注)奥行補正率とは、地区区分(普通住宅地区など)ごとに、その宅地の奥行(奥行距離)に応じて定められている割合をいいます。
なお、2つ以上の道路に面している宅地の場合、道路の数だけ路線価が付されていることもあります。
このような場合には、「正面路線」を決めなければなりません。
この正面路線の決め方としては、道路ごとに、「路線価×奥行補正率」として算定した金額のうち、最も高い金額の道路を正面路線とします。
また、道路に面している宅地の形状によっては、その利用価値も増減します。
たとえば道路に面している距離(間口距離といいます)に比べて奥行距離が極端に長い宅地は、使い勝手が多少悪くなります。このような場合には「奥行長大補正率」を乗じて、評価減(評価額の減額)をすることができます。
同様に、いびつな形の宅地や、路線価が付されている道路に面していない宅地、高低差のある宅地や、高圧線の下にある宅地なども、通常の宅地に比べると利用価値は低くなることから、その評価額の算定においても一定の評価減が認められています。
反対に、角地であったり、2つの道路に挟まれた宅地などの場合には、通常の宅地に比べてその利用価値は高くなることから、その評価額の算定においては補正率加算(評価増)をしなければなりません。
(宅地の評価:倍率方式による評価方法)
倍率方式による評価は、固定資産税評価額に、国税庁の公表する「評価倍率表」に記載された倍率を乗じて行います。
評価倍率表は、国税庁のホームページから確認することができ、市区町村別に適用地域が定められており、その土地の地目ごとに倍率が設定されています。
具体的な評価方法は、
宅地の固定資産税評価額×評価倍率 となります。
(利用方法の違いによる宅地の評価方法)
前述の評価方法は、宅地の所在地や形状の違いによるものでした。
ここからは、宅地の利用方法の違いによって選択できる評価方法を説明します。
(貸宅地の評価)
被相続人が地主で、他者にその土地(宅地)を貸しているケースがよく見受けられます。
その借地人が借りている土地の上に自分の家を建てている場合があります。
このような場合の、被相続人の宅地のことを「貸宅地」といいます。
ちなみに借地人には、家屋の所有を目的として賃借する土地について「借地権」という権利が発生します。
一方、被相続人については、貸宅地は自分の所有ではありますが、借地人が家を建てて利用している分だけ利用が制限されることになります。
(借地権の分だけ利用価値が下がるイメージです。)
つまり元々の宅地の評価額(自用地評価額)から、借地人の権利相当額(借地権相当額)をマイナスした価額が、貸宅地としての評価額となります。
具体的な評価方法は、
自用地評価額×(1-借地権割合)となります。
(使用貸借により貸している宅地)
父が、自分の土地に息子の家を建てさせることはよくあることです。
息子としては、父から土地を借りて自らの家を建てたということになりますが、このような場合、父が息子から土地の使用料を徴収するということはめったにありません。
無償(タダ)で土地を提供することがほとんどです。
このような貸し借りのことを「使用貸借」といいます。
これに対してきちんと使用料を徴収して行う貸し借りのことを「賃貸借」といいます。
今回は、被相続人である父が使用貸借で息子に宅地を貸していた場合の、その宅地の評価方法のお話になります。
使用貸借により息子に土地を貸していたとしても、父である宅地の所有者は、その利用について支障はないと考えます。
従いまして使用貸借により貸している宅地の具体的な評価方法は、
自用地評価額(元々の宅地の評価額)となります。
(小規模宅地等の評価減の特例)
相続等により取得した財産のうち、被相続人が居住用として使用していた宅地や、事業用として使用していた宅地のうち、一定の要件を満たすものについては、以下の価額をその相続時の価額から控除することができます。
居住用宅地 → 330㎡を限度として評価額の80%相当額
事業用宅地 → 400㎡を限度として評価額の80%相当額
なお、不動産貸付用の一定の宅地については、200㎡を限度として評価額の50%相当額を財産の価額から控除することができます。
実際の相続では、被相続人の居宅を相続するケースが多くありますので、この規定の適用 を検討する必要があります。