相続税の申告(各人ごとの納付税額の計算)
(第3段階:各人ごとの納付税額の計算)
第2段階では、課税遺産総額を法定相続分で相続した場合の「相続税の総額」を計算しました。
ただ、実際の遺産分割では法定相続分通りに分割が行われるとは限りません。
そこで第3段階では、各相続人が実際に取得した相続財産の価額に応じて、第2段階で計算した「相続税の総額」を按分して、「相続人ごとの納付税額」を計算します。
なお、相続によっては相続人ごとに様々な事情があります。
相続税法では、このような各相続人の事情を考慮して、いくつかの「手当て」を設定しています。
この第3段階では、「相続人ごとの納付税額」を計算する際の「手当て」を説明します。
(贈与税額控除)
相続税の計算では、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産(相続時精算課税制度の適用を受けたものは除きます)については、生前贈与加算として、相続財産に含めて計算され、相続税が課されることになります。
このため相続人が被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた場合には、贈与時に贈与税が課され、さらに相続の際に相続税が課されることになります。
つまり、同じ財産について2重で課税されることとなります。
そこで相続税法では、2重課税とならないよう、このような相続人の相続税額から一定の贈与税相当額の控除を認めています。
これが贈与税額控除です。
(配偶者の税額軽減)
被相続人が財産を形成するには配偶者の貢献があったと考えられること・被相続人の亡き後、配偶者の生活の保障も考慮すべきであるなどの観点から、相続人である配偶者については、税額の軽減措置が認められています。
これが配偶者の税額軽減です。
(未成年者控除)
相続人のうち、相続等により財産を取得した時に20歳未満であるなど一定の要件を満たす者については、その相続人の相続税額から未成年者控除による税額控除が認められています。
これは成人になるまでの養育費等を考慮したもので、その者が20歳に達するまでの年数に応じて、一定の税額を控除することができます。
(障害者控除)
相続人のうち、一定の障害がある者については、その相続人の相続税額から障害者控除による税額控除が認められています。
この規定では、障害の程度により、その者が85才に達するまでの年数に応じて、一定の税額を控除することができます。
(相次相続控除)
相次相続とは相次いで相続が生じたことをいいます。
夫・妻・子の3人家族を例にします。
夫が亡くなり、その財産を相続した妻が、夫の亡き後、間もなく亡くなった場合、その財産を相続した子にとっては、同じ財産について2度も相続税が課されることになります。
そこで相続税法では、相続が発生してから10年以内に次の相続が発生した場合には、前回の相続で課された相続税額のうち一定の金額を、その相続人の相続税額から控除することを認めています。
これが相次相続控除です。
(外国税額控除)
被相続人の財産が国外にある場合、その財産を相続により取得したことで、財産が所在していた国から相続税に相当する税金が課される場合があります。
この場合には、同じ財産について日本と外国から税金が課されることとなり、2重課税となってしまいます。
そこで相続税法では、2重課税とならないよう、このような相続人の相続税額から一定の金額の控除を認めています。
これが外国税額控除です。
(相続時精算課税分の贈与税額控除)
前述の贈与税額控除は「暦年課税分の贈与税」が対象でした。
ここでは「相続時精算課税分の贈与税」が対象となります。
規定の趣旨は、暦年課税分の贈与税と同じ、2重課税の排除が目的となります。
したがって、相続時精算課税制度の適用により贈与税を納付した相続人の相続税額から一定の贈与税相当額の控除を認めています。
(相続税の2割加算)
これまでは、各相続人の事情を考慮して、納付税額を計算する際の「手当て」を説明してきましたが、ここでは「手当て」ではなく「負荷」を課す規定を説明します。
それが「相続税額の2割加算」の規定です。
この規定は、相続人が一定の者であると、その相続人の相続税が2割増しとなる、というものです
一定の相続人とは次に掲げる者を指します。
- 兄弟姉妹
- 代襲相続人ではない孫
- 第三者
つまり相続人が、「配偶者以外」で「被相続人の一親等の血族以外」であれば、その者の相続税が2割増しになるということです。
(各人ごとの納付税額)
「相続税の総額」を按分して、「相続人ごとの納付税額」を計算し、各相続人の事情を考慮して、相続人ごとに税額控除や2割加算をして、最終的な納付税額を計算します。
これで(第3段階「各人ごとの納付税額」の計算)が完了します。